谷川連峰・稲包山 – 紅葉に包まれた秋の森を歩く【後編】

登山

登山した日-2015.10.18

360度の大絶景が広がる稲包山、長大で歩き甲斐のあるキワノ平ノ頭、歴史ロマン溢れる三国峠と三国路自然歩道・・・見事な紅葉に包まれながら稲包山の魅力を堪能した登山日記後編です。

大展望広がる稲包山山頂

赤沢峠からは緩やかな起伏の尾根道が続きます。常に目の前に見える稲包山の槍の穂先は、眼の前まで来ると鋭さも和らいで山頂に立つ登山者の姿をハッキリ見ることが出来ました。

稲包山最後の登りは急登で息が切れる登りだけどそう長くは続かず、山頂に立つと360度の大展望が広がっていました。

見渡すどの山も緑や赤や黄色のグラデーションに染まっていました。山頂には男性が一人居るだけで静かだった稲包山。ここで過ごした僅かな一時は本当に気持ちいいものでした。

秋、紅葉の稲包山ピラミダルな稲包山

ピラミダルな稲包山が近づいてきます。

稲包山山頂は遮るものが無く360度の大絶景

稲包山山頂は遮るものの無い360度の大絶景が広がっていました!

稲包山から望んだ上ノ倉山方面の山並みは、重厚感溢れていて見応え十分

稲包山から望んだ上ノ倉山方面の山並みは、重厚感溢れていて見応え十分。

稲包山からキワノ平ノ頭まで続く緩やかな尾根とその先に連なる谷川連峰

稲包山からキワノ平ノ頭まで続く緩やかな尾根と遠く連なる谷川連峰を遠望。

『キワノ平ノ頭』のツラい尾根歩き

稲包山へはたどり着いたものの、実は今回歩くコースのまだ半分も歩いていないという事実・・・次なる目的地『三国峠』までは『キワノ平ノ頭(1511m)』を始め幾つもの小ピークを越えていかなくてはなりません。稲包山山頂から三国峠へ続く尾根筋を眺めると、ゆるやかな起伏が続く尾根道に見えたので踏破は楽だろうと思っていました。

でもいざ踏み込んでみるとアップダウンのキツイ道で、稲包山までの登りですでに疲労がかさんでいたから余計にツラく感じます。

でも尾根道だから見晴らしが良くて終始開放的な気分で歩き続ける事ができました。これが無かったら精神的に参って途中でダウンしていたかもしれません。ふと後ろを振り返ると稲包山は丸みを帯びた瘤となって笹ヤブの向こうにそびえていました。

ダラダラした尾根道を登り降りし続けていると『キワノ平ノ頭』と書かれた道標が見えました。

『えっ、ここがキワノ平ノ頭の山頂?』

何の前触れもなくキワの平ノ頭へ辿り着いたからなんだか意表を突かれた気分。もし標識が無かったら山頂に気づかず素通りしていただろうキワノ平ノ頭の山頂はなだらかな尾根の一部分のような感じでした。

キワノ平ノ頭を過ぎると、再びダラダラした下りが続きます。

秋、紅葉の稲包山キワノ平ノ頭まで続く尾根道の向こうには谷川連峰の仙ノ倉山や平標山が見えます

キワノ平ノ頭まで続く尾根道の向こうには、谷川連峰の仙ノ倉山や平標山そびえ立っていました。

振り返って望んだ稲包山。今度は新緑の時に登ってみたいな

振り返って望んだ稲包山。さようなら!今度は新緑の時に登ってみたいな。

秋、紅葉の稲包山尾根筋から望む上ノ倉山方面の山並み

尾根筋から望む上ノ倉山方面の山並み。

秋、紅葉の稲包山山肌は紅葉一色

山肌は紅葉一色。

稲包山を下り切ってキワノ平ノ頭への登り返しにこれから挑みます

稲包山を下り切ってキワノ平ノ頭の登り返しに差し掛かりました。

秋、紅葉の稲包山キワノ平ノ頭は標識が建っているだけのシンプルな頂

キワノ平ノ頭は標識が建っているだけのシンプルな頂。

三国峠へ

日差しはすっかり高くなり干し草のような香りを含んだ風が稜線を吹き抜けていきます。下りだから惰性でぼーっとしながら歩いてると一人の男性が登って来ました。早足で僕とすれ違い、あっと言う間にキワノ平ノ頭を越えて稜線の影に隠れて見えなくなります。

『そういえば今日ここまで歩いて出会った人は稲包山山頂で一人とさっきの人合わせて2人だけか。日曜のこんな絶好の登山日和なのにほんと人が居ないなぁ。』

ここまで人と出会わないとは思いもしませんでした。

尾根を下り続けて鞍部に着くと『長倉山(1439m)』のキツイ登り返しが待ち構えていました。標高差は100m程だけど勾配がキツすぎて意外と手こずります。『数歩登って苦しくて足を止めまた数歩登って・・・』これを繰り返しながら長倉山山頂へ着くと今度は三国峠への急な下り。眼下には三国峠が見えているからあと少しなんだけど、滑りやすい急坂だからうまく下れません。

やっとの事で三国峠へ降り立ちここで休むことにしました。三国峠は小さな神社が建っていて休憩にはもってこいの場所。他に登山者が2~3人居るだけで静かだったけど、程なくして三国山方面から高齢者の登山グループが十数人ほど降りて来ると一気に賑やかになりました。

長かった登山もいよいよ終盤、これから三国路自然歩道を通り戊辰の役古戦場跡経由で法師温泉まで下山していきます。

 キワノ平ノ頭から左に三国山を望む。三国山と左の鉄塔の間の凹んだところが三国峠です

キワノ平ノ頭から左に三国山を望む。三国山と左の鉄塔の間の凹んだところが三国峠です。

秋、紅葉の稲包山キワノ平ノ頭を見上げて

キワノ平ノ頭を見上げて。

秋、紅葉の稲包山長倉山の登り返し

ここから長倉山への登り返し。もう体力消耗しまくってるから登りを見ただけで気が滅入ります。

 長倉山の登り途中で見た稲包山とキワノ平ノ頭

長倉山の登り途中で見た稲包山(左)とキワノ平ノ頭(右)の山並み。随分歩いてきたんだなぁ。

秋、紅葉の稲包山 長倉山山頂は藪に包まれて展望は良くありませんでした

長倉山山頂は藪に包まれて展望は良くありませんでした。

 長倉山山頂を離れると眼下に国道17号線三国街道の道路

長倉山山頂を離れると眼下に国道17号線三国街道の道路と、これから歩く三国路自然歩道の平坦な尾根が見えてきました。

 三国峠から見上げた三国山

三国峠から見上げた三国山は丸っこいたおやかな山容です。

歴史を感じる三国路自然歩道(旧三国街道)

三国路自然歩道へ入ると今まで歩いて来た道とは雰囲気がガラリと変わって道幅の広い平坦な道へと変わります。

辺りに広がるブナの森は今が紅葉のピーク。午後の日差しを受けて黄金色に輝くブナの森は本当に綺麗でした。

歩道脇にお地蔵さんや石碑が建っています。また少し進むと今度は幾つものお墓が現れます。傍らの看板には『長岡藩士なだれ遭難の墓』と掲げられていて

元文五年 1740年 二月五日長岡藩士永井磯七ほか7名、外人足4名が長岡藩内の犯人を、江戸で捕えて唐丸カゴに入れて護送中表層なだれに遭い藩士全員死亡。犯人と人足はなだれに巻き込まれず、助かった。

また少し歩くと今度は『三坂の茶屋跡』が見えてきました。建物は無く敷地跡とお墓・石碑が残されているだけ。ここにも看板で説明書きがあり、この自然歩道は『旧三国街道』として江戸と越後を結ぶ交易路として利用されていたそうです。今は単なる自然歩道だけど、ホンの百数十年前はここを大名行列が通ったり、サムライや馬を連れた行商などが往来していたと思うとなんだか不思議な気分です。こんな山深い中を人が往来していたんだから。

当時の歴史を偲びながら紅葉美しい森を1時間程堪能すると『大般若塚』供養塔の建つ戊辰の役古戦場へ到着しました。大般若塚供養塔はこの辺りに出没した妖怪を鎮めるために建てられた石塔で、石の表面には難解な漢文がびっしり彫り込まれていました。

お地蔵さんが静かに佇む秋の三国路自然歩道

お地蔵さんが静かに佇む秋の三国路自然歩道。

 黄金色に輝くブナの森。三国路自然歩道では見事な紅葉の森が延々と続いていました

黄金色に輝くブナの森。三国路自然歩道では見事な紅葉の森が延々と続いていました。

長岡藩士なだれ遭難の墓

長岡藩士なだれ遭難の墓。

三国街道何処までも続く紅葉の森をひたすら歩いて

何処までも続く紅葉の森をひたすら歩いて。

三国街道紅葉の森を見上げて

紅葉の森を見上げて。

戊辰の役古戦場に建つ大般若塚供養塔

戊辰の役古戦場に建つ大般若塚供養塔。

法師温泉へ下山

戊辰の役古戦場から西に向かって伸びる下山路を下ると、紅葉の森に人工林が混じってすっかり見応えが無くなってしまいました。下の方から国道17号線を走るトラックや車のエンジン音が大きく響いて来ると森が切れて国道17号線へ降り立ちます。

車に轢かれないように横断してさらに続く下山道を下って行くと、木々の隙間に建物が見えてきて法師温泉へ降り立ちました。いかにも山奥の秘湯らしい素朴な佇まいの法師温泉は日帰り入浴も出来るから、温泉目当ての車がひっきりなしに行き交う道路脇を歩き続けて、登山口まで戻ってきました。

木々の向こうに見えて来た法師温泉

木々の向こうに見えて来た法師温泉。

ひなびた趣の法師温泉

ひなびた趣の法師温泉。

 赤沢スキー場まで無事たどり着きました。遠くには三国山が相変わらずたおやかな姿でそびえていました

赤沢スキー場まで無事たどり着きました。遠くには三国山が相変わらずたおやかな姿でそびえていました。

終わりに

今回初めて登った稲包山。一番印象に残ったのは『森の美しさ』でした。特に三国路自然歩道に広がるブナの紅葉はとても綺麗でしかも長く続くので見応えも十分。

赤沢峠付近のブナの森も綺麗だったなぁ。

稲包山山頂の展望も凄くて谷川連峰や上ノ倉山方面の山並みに重厚感があってとても見応えがありました。そして稲包山からキワの平ノ頭までの稜線歩きも展望に恵まれてとても気持ち良いのでおすすめの場所です。結構体力を使うコースでしたが今度は春にここを歩いてみたいと思います!

※↓春に稲包山を登った時の日記はこちら(2017年5月)

谷川連峰・稲包山~新緑に染まる上越の山々①
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稜線の記憶