谷川岳&一ノ倉岳&茂倉岳~初夏の息吹(3)

登山

登山した日-2015.5.22

美しい新緑と青空と残雪と花々に出会うことが出来た谷川連峰核心部登山日記第三弾。一の倉岳・茂倉岳を踏破して長大な茂倉新道の下山に挑みます。

一ノ倉岳、なだらかなササ原の頂

一ノ倉岳最後の登りに思いの外手こずって、息苦しさと辛さで何度も足が止まります。

ふと後ろを振り向くと踏破して来た谷川岳や一ノ倉沢の刃の稜線が、僕の視線に大きく広がっていました。

谷川岳が持つ険しさと厳しさ、そして雄大さを感じる展望を背に受けて、力を振り絞って登り切るとササ原広がるなだらかな頂きに立ちました。登山道の傍らにドラム缶を半分にして埋めたような建物『一ノ倉岳避難小屋』と標識が立っています。

標高1974m、一ノ倉岳山頂へ到着です。

谷川岳は断崖絶壁の絶頂だったのに一ノ倉岳だと草原広がるなだらかな優しい頂。峰がひとつ違うだけでこうも雰囲気が変わるなんてちょっとびっくりです。

一ノ倉岳山頂は茂倉岳方面と、湯桧曽川・土合方面へ降りる堅炭尾根登山道の分岐点になっていました。ここまで来れば茂倉岳はあと20分程の行程です。疲れていたけど休憩は程々にして茂倉岳を一気に目指します。

ザンゲ岩から望む一ノ倉岳と茂倉岳

ノゾキから望む一ノ倉岳(右)と茂倉岳(右奥)。

一ノ倉岳登り途中から見た谷川岳とオジカ沢の頭

一ノ倉岳登り途中から見た谷川岳(左)とオジカ沢の頭(右)。

谷川岳の左側はスパッと切れ落ちて険しいけど、右側はササ原の緩やかなスロープで優しい姿。2つの顔を持ってます

谷川岳の左側はスパッと切れ落ちて険しいけど、右側はササ原の緩やかなスロープで優しい姿。2つの顔を持ってます。

一ノ倉岳の山頂まであともう少し

一ノ倉岳の山頂まであともう少し。

一ノ倉岳の山頂へ到着!傍らのドラム缶みたいなのは一ノ倉岳避難小屋で人が3人くらい入れる程度の小さな小屋です

一ノ倉岳の山頂へ到着!傍らのドラム缶みたいなのは一ノ倉岳避難小屋で人が3人くらい入れる程度の小さな小屋です。

茂倉岳、ササ原と雪とお花畑のたおやかな稜線漫歩

一ノ倉岳山頂を後にしてもササ原の尾根道が続いています。ササの茂みの中に目を遣ると、ササとは異なる色艶鮮やかな葉を付けた株があちこち生えています。

・・・きっとあれだ、ニッコウキスゲだ。

あと1~2ヶ月すればこのササ原はニッコウキスゲで彩られるでしょう。その景色を想像してると緩やかな下り斜面に差し掛かかり、雪渓が横たわる鞍部の先に茂倉岳を間近に捉えました。

雪渓を越えると茂倉岳の登り返しに差し掛かりました。

登山道脇の陽だまりになってるところはお花畑になっていて、黄色や紫のスミレに混じってハクサンイチゲが雪渓に負けないほどの真っ白な花をつけていて目を奪われます。

緩やかな尾根道を駆け上がって到着した茂倉岳山頂は広々としていて、当然ここも大展望が広がっていました。

ササの草原が広がる一ノ倉岳の平坦な尾根の向こうに茂倉岳

ササの草原が広がる一ノ倉岳の平坦な尾根の向こうに茂倉岳。

一の倉岳~茂倉岳鞍部に横たわる雪渓を越えて。陽射しが反射して眩しい

一の倉岳~茂倉岳鞍部に横たわる雪渓を越えて。陽射しが反射して眩しい。

雪渓を越えて茂倉岳最後の登りへ

雪渓を越えて茂倉岳最後の登りへ。

振り返ると一ノ倉岳(左)と谷川岳(右)

振り返ると一ノ倉岳(左)と谷川岳(右)。

茂倉岳登山道脇に咲くハクサンイチゲ

登山道脇に咲くハクサンイチゲ。

茂倉岳山頂はもうすぐだ。あと一息ガンバレ

茂倉岳山頂はもうすぐ。あと一息ガンバレ。

茂倉岳に到着

茂倉岳に到着しました。

茂倉岳山頂で極上の一時

時計を見ると10:40。山頂から土樽駅までは後3時間程の下りだか15時の電車にはなんとか間に合いそう・・・、時間に余裕が出来たし、谷川岳や一ノ倉岳ではほとんど山頂に留まらなかったからここでしばらく休む事にしました。

初夏特有のジリジリ焼け付く陽射しのキツさを除けば、実に心地良かった茂倉岳山頂。誰もいない貸切状態の山頂で少し横になりました。

ササ原を揺らしながら吹き抜ける清々しい風。どこからか聞こえるヒバリのさえずり。登山道でひなたぼっこするアゲハチョウ・・・のどかだけど極上の一時が山頂に流れていました。

茂倉岳山頂北側、清水峠方面を望むと残雪の山が幾つも。山が多すぎてどれが何の山かわからないくらい

茂倉岳山頂北側、清水峠方面を望むと残雪の山が幾つも。山が多すぎてどれが何の山かわからないくらい。

清水峠付近をズームアップ。中腹辺りに旧国道の歩道のラインが確認できます

清水峠付近をズームアップ。中腹辺りに旧国道の歩道のラインが確認できます。

茂倉岳山頂西側の景色。遥か遠くに苗場山の大きな山塊が広がって見えました

茂倉岳山頂西側の景色。遥か遠くに苗場山の大きな山塊が広がって見えました。

南側の景色。左に万太郎山、右に仙ノ倉山、右奥に平標山といった山々の連なりは見てるだけで圧巻

南側の景色。左に万太郎山、右に仙ノ倉山、右奥に平標山といった山々の連なりは見てるだけで圧巻。

同じく南側の景色。左に一ノ倉岳、右に谷川岳の双耳峰

同じく南側の景色。左に一ノ倉岳、右に谷川岳の双耳峰。

長大な茂倉新道

山頂で過ごす時間は至福であればあるほど一瞬で過ぎてしまいます。時刻は11:30が近づこうとしていました。さあ、そろそろ出発しようか・・・。名残惜しいけどまた次回来ればいいんだし。

茂倉岳山頂を後にして西側尾根上に走る『茂倉新道』へ向かいます。山頂を少し離れると、茂倉新道の尾根が足元から麓まで一直線に続いていました。

うわぁ・・・コレはキツそう。今からこの尾根道を降りるの?

標高差約1500mはあるかもしれない長大で急峻な尾根の出現に、思わず後ずさりしたくなるけど覚悟を決めて足を進めて下っていきます。

下り始めると半分雪渓に埋まった茂倉岳避難小屋が見えてきます。避難小屋付近の登山道は雪渓に埋もれていたので雪渓上を歩いていきます。慎重に足を運んで雪渓を抜けて避難小屋を越えていきます。

その先は容赦のない急峻な下りの連続で、膝の関節が泣きそうです。せめてもの救いは辺りに広がる山々の壮大な展望と美しい花々を拝める事だけ。

一時間近く下り続けていると尾根道の先に小さなピークが見えてきました。登り返しになって息を切らしながら頂に立つと矢場ノ頭(1490m)書かれた標識が立っていました。

岩の上に腰掛けて膝や太ももをマッサージしながら地図を取り出して現在位置を確認。とりあえず茂倉新道を半分は踏破したみたい。でもまだ半分残ってるのかぁ・・・

キツイ下りはまだまだ続きます。

茂倉岳山頂を後にして茂倉新道へ。足元から続く尾根を一気に下って写真右端に見える関越自動車道土樽PAまで降りていきます。これはキツそう・・・

茂倉岳山頂を後にして茂倉新道へ。足元から続く尾根を一気に下って写真右端に見える関越自動車道土樽PAまで降りていきます。これはキツそう・・・。

茂倉岳山頂直下に建つ茂倉岳避難小屋

茂倉岳山頂直下に建つ茂倉岳避難小屋。

茂倉岳避難小屋はまだ雪に埋もれていました

茂倉岳避難小屋はまだ雪に埋もれていました。

茂倉新道に咲いていたハクサンイチゲ

茂倉新道に咲いていたハクサンイチゲ。

茂倉岳白いアジサイのような花をつけるのはオオカメノキ(別名ムシカリ)

白いアジサイのような花をつけるのはオオカメノキ(別名ムシカリ)。

茂倉岳薄紅色の大輪の花を付けるシラネアオイが殺風景な登山道にささやかな彩りを。茂倉新道は花が多い尾根道でした

薄紅色の大輪の花を付けるシラネアオイが殺風景な登山道にささやかな彩りを。茂倉新道は花が多い尾根道でした。

振り向くと左に茂倉岳、右奥に谷川岳

振り向くと左に茂倉岳、右奥に谷川岳。

谷川岳・茂倉岳・一ノ倉岳険しい山肌

険しい山肌。

茂倉新道から望む万太郎山

茂倉新道から望む万太郎山。

尾根の先に矢場ノ頭(1490m)の小ピークが左側に見えてきました

尾根の先に矢場ノ頭(1490m)の小ピークが左側に見えてきました。

矢場ノ頭山頂へ到着。向こうには茂倉岳

矢場ノ頭山頂へ到着。向こうには茂倉岳。

茂倉新道の密林の中で

矢場ノ頭を過ぎると登山道は北西寄りに進路を変えるようになり、今まで歩いて来た尾根が影となって谷川岳やオジカ沢の頭が見えなくなってしまいました。

これまで広がっていた草原も下降していくに連れて灌木が生い茂るようになり、やがてクロベやヒノキ、キタゴヨウなどの鬱蒼とした針葉樹の密林へ突入すると展望自体が拝めなくなってしまいました。

この辺りの登山道は木の根っ子が大きく露出する苦しい登下降の連続で、思わず悲鳴を上げたくなります。

一体この道いつまで続くんだろう。執拗に続く木の根蔓延る道に辟易しながら、我慢して3~40分近く歩き続けると針葉樹自体が少なくなり、ブナの森にとって変わるとやっと普通の登山道へと戻りました。

矢場ノ頭を下るとクロベやキタゴヨウなどの針葉樹の森に突入

矢場ノ頭を下るとクロベやキタゴヨウなどの針葉樹の森に突入。登山道はそれらの根っ子がはびこっていて根っ子の上を降りたり登ったりの苦しい登山が連続します。

矢場ノ頭のタムシバ

森の中に咲く白い花、タムシバ。花びらが風に揺られる様子はなんだか木に引っかかったティッシュペーパーのよう。

谷川岳・茂倉岳クロベの森を抜けると新緑のブナが出てきます

クロベの森を抜けると新緑のブナが出てきます。

茂倉岳木々の向こうに見える万太郎山

木々の向こうに見える万太郎山。

無事に土樽駅へ下山

矢場ノ頭を下り始めて1時間が過ぎた頃、ブナの純林広がる地点まで降りて来ました。この辺りは比較的勾配が緩やかで足の負担が小さいから歩くのが楽です。安心しきった矢先、ブヨの集団に襲われます。

ブヨから逃げるように急いで駆け下りていくと再び急斜面の下り道になって辺りはスギの人工林や雑木林が広がる森へ変わります。そして森の下の方から車が行き交う音が聞こえると関越自動車道が近いことを教えてくれました。

粘土質の滑りやすいジグザグの道を下ると、不意打ちのように森から抜けて茂倉岳登山口の駐車場広場に出ました。なおもまとわりつくブヨの集団もさんさんと照りつける陽射しは苦手なようで退散して居なくなって一安心。

時刻は14:30前でした。あとはアスファルトの道を30分程歩けば土樽駅だから15:24の電車には間に合いそうです!

真夏のむせる陽気に包まれた谷筋の道路を歩いてる途中で振り返ると、茂倉岳のゆったりした頂きが新緑の森の彼方に浮かんでいました。

茂倉岳どんどん高度を下げてブナの森へ突入

どんどん高度を下げてブナの森へ突入。

茂倉岳心地よいブナの森歩き・・・と思いきやブヨが多くて大変

心地よいブナの森歩き・・・と思いきやブヨが多くて大変。

茂倉新道登山道入り口まで下山

茂倉新道登山道入り口まで下山。

関越自動車道土樽PA付近の橋から茂倉岳を見上げると頂きは遥か遠くに

関越自動車道土樽PA付近の橋から茂倉岳を見上げると頂きは遥か遠くに。

土樽駅は小ぢんまりとした無人駅でした

土樽駅は小ぢんまりとした無人駅でした。

15:24発水上行きの電車が来ました。電車に乗って椅子に座ると疲れがどっと出てました

15:24発水上行きの電車が来ました。電車に乗って椅子に座ると疲れがどっと出ました。

帰り際、谷川岳を望める場所があったので一望

帰り際、谷川岳を望める場所があったので一望。

さっきまであの頂のてっぺんに居たとは思えないほど遠くに谷川岳は残雪をまとって悠然とそびえていました

さっきまであの頂のてっぺんに居たとは思えないほど遠くに谷川岳は残雪をまとって悠然とそびえていました。

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